2014年11月2日日曜日

Simon Phillips

あの頃結局サイモン・フィリップスはフーのドラマーだったのだ。

 ザックが途中離脱して、スコット・デヴォースが参加した四重人格ツアー。商品化されたのはスコットのヴァージョンだった。ここでの彼の演奏は、ザックに比べてもよりキースのドラミングを再現していて、アルバムを聴きなれた耳には違和感が少なかった。ザックのドラミングは、キース的なフレーズも交えつつあくまで彼自身のオリジナルのスタイルだから、必ずしも従来のフーの曲にジャストフイットするようなプレイでない場合も多々あった。だけど、誰もが「ザックはフーのドラマーとしてふさわしい」と感じていた。

 フーが結成50周年、ラストツアーを行うにあたって、ピートとロジャーは再びザックを呼び戻す。

 スコットのプレイは確かに、フーらしく聴こえるような、キースっぽいスタイルを再現していた。が、そもそもフーのメンバーに「バンドに合わせて誰かを模倣する」ような人間がいただろうか?

 だいたいにおいて、オリジナルメンバー達が完全にオリジナル過ぎるプレイヤーで、誰一人他人に合わせる気がなく、誰かを真似したり、手本にした気配さえ希薄な連中なのだ。フーはルーツが見えづらいバンドと言われるが、それはピートの楽曲も、メンバーの演奏も全て元ネタが見当たらないからだ。

 キースが死に、ケニー・ジョーンズがドラマーの座に座った。ケニーもスモール・フェイシズ初期はキースとも共通する手数の多いプレイをしていたが、80年代頃はかなりスクエアなプレイヤーだった。それが、フーに迎えられて、フーに合わせて、キース的なプレイをしたか?一部のファンに不評なくらい、ケニーは自分のスタイルを貫いた。キースの真似なんか一度もしなかった。色々言われるけど、Who Are Youくらいからピートの楽曲はケニー的(または、サイモン的)なプレイを求めていたし、それはその時代のフーのサウンドとしてケニーを含めた4人が作り出したものだった。

 俺はサイモン・フィリップスには違和感しか感じなかったけど、スコットとザックのコトを考えてわかった。サイモンも、決して自分のスタイルを崩さず、フーの中に自分のまま収まろうとした。それは今になって振り返ればフーのメンバーの条件だったのだ。ピートもサイモンにキースの模倣なんか求めて無かった。サイモンはピートのDeep Endのメンバーだったから、きっと「そのまま演ってくれ、人真似なんかするな」って言われた筈だ。そして、そうじゃないとジョンやピートと拮抗したプレイなんかにならないのだ。俺の好き嫌いなんか関係なく、サイモンはフーの新ドラマーとして求められる仕事をしたと思う。実際、彼のプレイをキースの後任としてふさわしいと感じるファンも数多くいたのだから。彼はこなしたし、受け入れられていたと思う。

 ちょっと勘違いされやすい文章になっちゃったけど、スコット・デヴォースの仕事を貶める意図もない。スコットにここで求められるのは「ザック、またはキースの代役として四重人格ツアーを成功させる」プレイだった筈で、スコットは「代役でありサポートメンバー」としての仕事を完璧にこなした、と思っている。

 ピノもジョンの真似なんかしてないし、ザックもそうだ。オリジナルメンバー以外ではケニーが唯一の正式メンバーであり、サイモンもピノもザックも一応サポート扱いではあるけど、準メンバー的に見られる理由はそこにある。フーであるからには自分でなければならない。誰かの真似であってはならない。自分自身がその誰か(Who!)であることが重要なのだ。

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