
俺は基本的に「バンドマジック」というのは「バンド名」にも宿ると思っていて、それはピートとロジャー二人だけが生き残ったフーを見たときに思いを強くしたんだけど、要するに、バンドというのはメンバーが「バンドであろう」と思ったときに成立すると思っている。だからRamはデニー・サイウェルとヒュー・マックラケンがどれだけ奮闘しようとあくまでポールとリンダの作品だし、Band on the Runはポールのワンマンレコーディングにデニーとリンダが「参加した」状態で作られてもバンドの音楽として成立しているのだ。
そういえばBand on the Runがまさに「バンドが逃げた」状態で作られた、っていう言及がされてるのを見た記憶がないのだけど。コレは余談。

さっきは「参加した」という書き方をしたが、実はデニーの貢献は結構大きくて、というか大きくならざるを得なくて、実際、こういうとき以外に気が小さくなる面もあるポールは結構デニーに頼っただろうし、結果として、No WordsとPicasso's Last Words(あ、両方とも「Words」だ)ではデニーとポールがリードヴォーカルを分け合っている。

特にLet Me Roll ItやBand on the Run、Jetの完成形は明らかにWings Over Americaでのもの。まあ、その分異形性が取り払われて普通のロックンロールになってしまった、という面もあって一概に「完成=最高形」では無いとは思うんだけど。
Let Me Roll Itに関しては特に昔からこの論を言い続けてたんだけど、ジミー、ジョー参加後のヴァージョン以降のアレンジはあくまで「完成度の高いブルーズロック」で、レノンのCold Turkeyとの比較をするような音楽ではなくなっているとも思う。Cold Turkeyは逆にトロントでの普通のブルーズロックヴァージョンからスタジオ録音で異形の「レノンブルーズ」(俺の造語)に進化したんだけど。Let Me〜の場合はそれでも、One Hand Clappingで聴けるジェフ・ブリトンが叩くヴァージョンからジョーのドラムに代わる課程でリズムの側から異形性を取り戻してるのは面白い。
そういえばBand on the Runも元々はポールの持病である「憧れのHappiness is a Warm Gun症候群」から産まれた曲の一つ(にして最高峰)だから、このアルバムは結構「レノンコンプレックス」から産まれた作品でもあるのかもしれない。この病気についてはまた別途語るとしたい。
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