2014年1月27日月曜日

Rock Show

なんかOver Americaのデラックス盤がグラミー取ったらしいし。

 Pacific Rimのレビューでも触れたが、去年2回観に行った映画がWingsのRock Showだ。勿論、映像作品のリイシューとアルバムのデラックスエディション発売に併せたリバイバル上映で、新作映画ではない。でもウイングスのライヴを大画面で見れるんだからね。しかも、ウチからかなり近い海老名で、しかも金曜日にやるってんだからね。行かない理由もない。

 重要なのは、この映画は「ポール・マッカートニー」ではなく「ウイングス」のライヴ映画だと言うこと。この映画を観て「ウイングスって所詮ポールのバックバンドだったんだよね」みたいなコトを言い続けられる奴は音楽なんか一生聴かなくてもよろしい。そういう視線でしか「バンド」を観れない奴が音楽を楽しめるとは想わないから田舎に帰ってトマトを作りなさい。

 トマト作りながら音楽聴くのは勝手だが。

 いや待て、何の話だ。そう、ウイングスの映画。大画面で、観たんだよウイングスを。結局海老名でパンフ買い忘れたから、って理由で六本木まで行って、パンフだけ買うのもアレだからもう一回観た、って言うね。いや、2回観る価値はあったしね。勿論DVD(この時はまだBru-Rayプレイヤー持ってない)も買ったぞ。


 音楽映画の何が困るって、映画館で踊ったり拍手したり、って雰囲気がない所ね。コレはフーのAmazing Journeyの時にも凄く思った。アレはドキュメンタリーだったから、曲の合間にインタビューが入ると踊りも止まるからあんまり盛り上がっても困るんだろうけど、全編ライヴ映画だともう立ち上がって踊りたい拍手したい喝采したい、ってそんな気分。まあ、座ってたけど手足首でリズム取りっぱなしでしたよ俺は。当然だろ。海老名はそうでもなかったけど、六本木はそういう客も多かったし、終了時には拍手も起こって気持ちよかったな。
 
 全盛期のウイングスが凄いことは解りきっているんだけど、第二期ディープ・パープルとと同じで、ある程度「通」みたいになってくると、あえて言えば飽きてくるんだよね(格好悪い話だけど)。近年は俺も、ちょっと弱いけど何とも言えない味のあるサイウェル/マッカロウ期やホリー/ジューバー期を聴くコトが多かった。でもやっぱり、大味で解り易過ぎるくらいだけどこの時代の凄さ、ってのを再認識した。

 バンドとしてのこなれ具合が凄いんだよな。ポールは勿論常に前面に出てるスターなんだけど、ジミーやデニーも充分にバンドメンバーとして目立ってる。「サポート」ではないんだよ。ポールと同格って言ったら言い過ぎだけど、見せ場もあるし、それが無理矢理じゃなくて自然に出るべき場所で出る、ポールの見せ場では引く、ってのが出来てる。バンドが上手く行ってる時って、そういうのが自然に出来るし、自然なのが伝わる。それはそのままグルーヴにもなるしね。だからリンダが外してもジョーが暴走気味でも全然気にならない。

 俺は以前からデニーやジミーのファンでもあって、ウイングスで一番好きなのはTime to Hideとか言ってしまったりもするんだけど(笑)、この映画の再公開以来、今までほぼ無視されてた彼らが好き、と言う意見がバンバン出てきた。うん、ソレを「何を今更!」って憤るんじゃなくて、素直に「解ってくれたか!」という気分になれるくらい、俺はマイノリティだったんだよ。

 見所は全編なんだけど、特に終盤、Beware My LoveやLetting GoあたりからラストのSoilyまでの盛り上がりはもう、観ながら発狂するんじゃないか、って言う勢い。本当に立ち上がって踊りたかった。ってか、踊るべきだった。自分の小心を恥じたい。うむ、「ロック・ショウ」という言葉がこれほど当てはまるステージは無いのではないか、それくらいにロック・ショウだった。


2014年1月25日土曜日

Pacific Rim

 2013年は変な年だ、重要な年だ、と言うコトばかり繰り返してるのだけど。

 驚くべきコトに、なんと’13年、俺は映画館に6回も行っている。俺が映画を観ないことは一部には有名だと思う。過去に観た映画の数は数えるほどで、小学生の頃観たじゃりン子チエ、それ以降はフック、シックスセンス、マトリックス、フーのAmazing Journeyにリメイクの電人ザボーガー。以上6回と言うことで、過去に観た映画と同じ数をこの1年で観たことになる。

 とはいえ、観た映画の本数は3本なのだ。つまり、同じ映画を何度も観てるのである。まるで映画ファンだ。

 ウイングスのRock Showは最初海老名で観て、そのときパンフを買い忘れたのでついでとばかりに六本木でもう一回観た。コレはもう最高だったのだけど最高なのを解っていて見に行って予想以上に最高だった、と言う話で、とりあえずウイングスの話はまた別にしたい。
 本題は最後にして、もう一つは年末に観たゼロ・グラビティ。コレは「少し映画に慣れよう」と思って、上映時間と話題性と興味の兼ね合いがベストだったから選んだ。面白かった、と言うかやっぱり画に圧倒されたけどね。ストーリーというか、テーマには思うところあったけどまあそれは置いておこう。

で、本題はパシフィック・リムだ。過去に「映画」というものにこれだけハマったことはあっただろうか。

 Twitterで散々話題になっていて、観たいとは思っていたのだけどなかなかタイミングが無くて、結局何を思ったのか友人との旅行先で観る(友人も観たいと思っていたので丁度良かったというのもある)ことに。この時は3D吹き替え版。その後一人で字幕版を渋谷で。そしてなんと(別件のついでがあったとは言え)名古屋まで出向いての4DX(吹き替え)版。
 勿論ソフトも買った。買ったのは最大限に特典映像が入手できるAmazon限定のBru-Ray版である。プレイヤーは持っていないので、それも入手した(ポータブルだけど)。今までは音楽ソフトさえDVDで満足していたのに、明らかに頭がおかしい。 サントラまで買った。わざわざ高価な国内盤を待ったのは友人がエンディングテーマの歌詞を聞き取りで理解したのが悔しかったからだ。ビジュアルガイドは翻訳が手に入らないので原書で(友人はコレも読めるのだ!嗚呼!)。小説版や関連雑誌など、随分色々買った。フィギュアにこそ手を出さないがピンバッジも買って4DX見に行くときはジャケットに付けて行ったぞ。

 最初は「スーパーロボットと怪獣が殴り合う映画」という認識で吹き替え版を見に行って、その通りの映画として観て、爆笑しつつその熱さ、映像のツボの突き具合に興奮していた。正直、それだけの映画のような気がしていた。だが、終わってから一緒に行った友人や、Twitterで色んな人と語り合っているうちに色々違う角度が見えてきた(俺は気付かなかったが友人は初回の段階で既に号泣ポイントがあったという)。コレはもう一度、今度は字幕で観るべきだな、との気分を強くする。

二度目を観る前に小説版を読んで、ストーリーを補完。後に知ったところによると翻訳は省略、誤訳のオンパレードで非常に残念な出来なのだが、それでも映画で(あえて)カットされた部分を補うには充分だった。実際、渋谷で字幕版を観るときにはこの小説の印象で行間を埋めながら観た。この時点で(友人とは全然ポイントが違うが)俺にも泣き所があることが判明。チャックとハークの物語にじんわり来る自分に気がつき「ヤバい!」と感じる。こういう「男の物語」にジーンとくる回路を自分が持っていたことにも驚き。

 三度目は事実上の「アトラクション」と思いつつ4DXならではの(ちょっと馬鹿っぽいとは言え)演出を楽しみながら観るのだけど、何故か泣き所が増えていることに気付く。カイダノフスキー夫妻の末期のシーンとかもうやばいんだよぉ!(シャッタードーム食堂のいちゃいちゃシーンに気付いちゃったせいもあるのかなぁ)

 吹き替えに評判が集まっていたけど、やっぱり本来は字幕版で観るべきだと思う。全編が日本語音声の吹き替え版ではこの映画の「言語に拘る部分」が解らないのね。マコやローリー、ペンテコストの日本語、タン三兄弟やテンドー、カイダノフスキー夫妻も自国語で喋るシーンがある。それに、アレはやっぱりロケットパンチじゃなくてエルボーロケットだ。

 映像は、やっぱり怪獣映画好きなら自動的に満足するんじゃないかなぁ。俺は今のCGがこれだけ重量感を表現できるとは知らなかったから特に新鮮な感動があった。ジプシー・デンジャーが艦船引きずり大股で闊歩し、オオタチを殴る!レザーバックが上陸時に踏み潰すトラックなんてあたりはもうニヤニヤが止まらない感じ。意味もなくコンテナでレザーバックの顔面殴るあたりも良かったなぁ。アレ、痛そうなだけで戦闘技術としてはたいして意味ないよな。それからライジュウをチェーンソードで真っ二つにするシーンな!アレも熱い!オオタチを空中で切り裂くのも格好いいけど、向かってくるライジュウに真っ正面からチェーンソード構えて!コレがもう!

 熱くなりすぎた。

 キャラクターも魅力的で、脇を無理に描かずに主役級だけ、しかも掘り下げたり広げたりせず端的に描くから誰がどういう奴なのか凄く解りやすい。しかもブレイン・ハンドシェイクの設定もあって殆どのキャラが(ペンテコストとテンドーを除いて)二人一組で描かれるから対比で見えやすくなってるんだよね。

 あとは理屈的には明らかにおかしいところを平気で知らんぷりするあたりも大好きだな。コレは70年代日本の特撮やテレビまんが(あえてアニメと言わない)のテイストを感じる。「ジプシーは原子力だからアナログだ!」とか嘘だろう、っていうね。
 ブレイン・ハンドシェイクで相手のネガティヴな感情や記憶が流れ込んで悩む、とか90年代以降の日本アニメだったら絶対やるところを完全無視、とか。マコがテストであれだけやらかして殆どトラウマにもならず2回目のドリフトはあっさり成功とか国産アニメだったらあり得ない。

 あとはやっぱラストだよね。臆面もなく(?)ローリー生還は勿論、「こつん」はもう圧倒的に正しい!アレじゃなきゃ絶対駄目!

2014年1月23日木曜日

Tokyo Quo Live !!

 去年の4月以来久々に、Tokyo Quoのライヴを演った。

  このバンドの話を少ししようか。2010年の末、元々mixiで、ジリさん(B)が「Status Quoのコピーバンドをやりたい」ってトピック立ててたんだよね、あり得ないことに。ここに俺が食いつかないわけがない。で、俺とヒカルさん(G/Vo)ともう一人のギタリストが立候補。ところがこのもう一人が最初のリハ直前にドタキャンしやがって、慌てて俺は従弟(G)に声をかける。ところがなんとヒカルさんもDustyさんというギタリストを呼び寄せていて、何と第一期Tokyo Quoはトリプルギターの5人編成というラインナップだった。このメンバーで2011年、9月、立川A.A. Companyでの1stライヴを演った後、QuoファンではなかったDustyさんは脱退。残りの4人で2回目のライヴ、コレも同じハコで12年の5月に演る。3回目のライヴは新宿クロウダディ・クラブ。コレは俺がお世話になってるとししゅんさんの企画で、JIVEandと共演。13年4月……と、年に1回ペースのゆるーい活動をしてきたわけだ。

  で、今回また年が変わって2014年1月18日、再びクロウダディで4回目のライヴにこぎつけた、ってワケだね。

  今回最大のトピックは新メンバー、みよんさんの加入だ。そう、遂にTokyo Quoは念願のキーボーディストを手に入れたのだ。コレで本来のサウンドでRockin' All Over The Worldが出来る!

  今回はO.E. Gallagher(勿論ロリー・ギャラガーのトリビュートバンド)と共演で、英国ロックファンにはたまらないステージになったはずだ。Tokyo Quoのセットリストは以下の通り。

1.Caroline
2.Backwater / Just Take Me
3.Whatever You Want
4.Rockin' All Over The World
5.Down Down
6.Roadhouse Blues
7.Big Fat Mama
8.Burning Bridges

 オープニングはシンセによるPictures of Matchstick Menから。鍵盤入りのRockin'〜やBurning Bridgesはやっぱり圧倒的に気分が上がるし、ヒカルさんがハープ、(よりによって)俺がヴォーカルをとったRoadhouse Bluesが出来たのも良かった。俺はとにかく楽しくやったし、正直言って全員ミスは多かったけど、いいライヴにはなったと思う。まあ、本人が何言っても説得力無いから、YouTubeで確認して欲しいな。会場の空気まで撮れてるか解らないから、単に下手なバンドに見えるかも知れないけど。とりあえず、俺はなんか終始ニコニコしていてキモい(笑)。

 共演のO.E. Gallagherは本当に上手いし、いいバンドだった。最高に楽しかったよ。俺達とは技量が全然違う。しかも、一見ストイックなようでしっかりエンターテインしている。いつの間にか引き込まれてたなぁ。
 ってかね、もう本国でもQuoとロリー・ギャラガーの共演なんか絶対見れないからこのステージは凄い組み合わせだと思うよ。リーダーさんと「このまま英国ツアー出来ますよ!」とか話してしまった俺が何故酔っ払っていたかというと、彼らのラストの曲でテンション上がりまくってガチ踊りしていたからだ。悪いのは全部店の常連のインチキ外人だ。

 今年はもっとライヴ演りたいなぁ。年間一本は少なすぎるぜ!

2014年1月21日火曜日

David Bowie / The Next Day

2013年のベストアルバムを3枚、と言われたら迷わずポールのNew電気の人間と動物と共にこれを挙げる。

 ボウイの場合、待ったからなぁ。電気もポールも、あとプライマルもだけど前作までに結構不満があった。それを払拭してくれる素晴らしいアルバムを作ったから溜飲が下がった感もあったし、まあ比較として素晴らしい、という面が無かったとも言い切れない。

 でも、俺は前作Reality(10年前なのだけど)に満足していて、というか90年代以降のボウイは傑作ばかり出してると思うのだけど、そういう勢いのある人が歩みを止めてしまっていて、そこからようやくカムバックして出したアルバムということで、期待より不安が大きかったというのも事実。また、不安はあるけど、ボウイ自身の病気もあったしリハビリ的に温かく迎えたい、という気持ちもまた、あったと思う。

 実際問題として、先行して公開されたWhere Are We Now?は、なんだかとても地味に感じた。映像に出てくるボウイの顔もすっかり老けこんでしまっていたし、声も優しいというより弱々しい。この時点では正直、アルバムにはあまり期待出来なかった(と言いつつ、海外にアナログで発注していた、というのも変な話だが)。

 ところがネットでの評判がエラく良い。結局、アナログが届くのが待ちきれなくて、迷った挙句にiTunes Storeで買ってしまうという暴挙に出る。ちなみにアナログにもCDは同梱されるので音がかぶるのは承知の上だ。我慢できなかった。

 聴いてみた。ガツン、と来た。

 サウンド的には90年代以降のボウイを踏襲していて、Realityからも違和感がない。10年前のアルバムと並べて違和感がないということは古臭いのかというと、全然そんなことはなく、充分に現代のロックアルバムとして成立している。バンドメンバーもお馴染みのメンツが離れてない(勿論、あの美しいゲイル・アン・ドーシーも健在!)のも嬉しい。個人的にはThe Next Day、I'd Rather Be High、The Stars (Are Out Tonight)あたりが大好きなのだけど、捨て曲は無いどころか、先行公開時には地味と思ったWhere Are We Now?もアルバムの中で美しく存在感を放っているんで、なんだか驚いた。アルバムってのはこういうことがある。

 さて、こいつがあまりにも良いため、13年末に出た3枚組ボックスヴァージョンを買おうか迷っているのだけど……?

2014年1月16日木曜日

Paul McCartney / New

ポールはライヴレポート書いたからいいかな、とも思ったんだけど、やっぱり13年ベストアルバムとして触れないわけにはいかないなあ、と思ったので、書く。

 とにかく、俺にはKisses On The Bottomは退屈の極みだった。「買わなければよかった」と思ったポールのアルバムはこれが唯一。基本クラシック作品は手を出してないのだけど、それと同じ扱いすべきだったのだね。なまじポールが歌ってるもんだから騙されてしまった。

 ポールはもう年老いたし、こういう路線にシフトしていくのかなぁ、と漠然と思っていたところに新作リリースの報せ。「ビートルズ回帰のサウンド!」と大々的にアピールされては、悪い予感しかしない。YouTubeなどでタイトルトラックNewが先行公開されたけど、アルバムが期待できなくなるのが嫌だったのであえて聴かずにいた。この段階では、がっかりするに違いないくらいに思っていたのね。

 アルバムリリース後もすぐには買わなかった。数回レコード屋で見かけてもスルーする日が続く。結局迷いに迷った挙句、パシフィック・リム4DXを観た帰りに、時間が空いてしまったついでに思い切って名古屋のタワーで購入。

 アルバムがSave Usから始まった時点で、これを「ビートルズ回帰」と表現した馬鹿を呪う。こんなサウンドなら不安を持つ理由も無かった。リリースと同時に迷わず買った。ビートルズなんて全然感じない。これはポール・マッカートニーだ。勿論ポールはビートルズ時代からこういう人だったけど、ビートルズ的、って表現が間違ってるのは誰が聴いてもわかるはずだ。商売の為の糞表現にまんまと騙された自分が憎い。

 解ってたはずなんだよ。今のツアーバンドと一緒にアルバムを作れば、ポールとしか言いようがないほどポップで、ポールとしか言いようがないほどロックなアルバムが出来るに決まってるんだ。その思いはライヴを観て強くなったのだけど、それだけ今のバンドはこなれてるし、ポールに信頼されてる。違うな、信頼されてるんじゃない。信頼し合っているんだ。

 全曲がバンドで録ったわけじゃないけど、サウンドに統一感はある。プロデューサーも数人を使い分けてるけどアルバムの色ははっきりしていて、それが結局ツアーでも見事に表現されていたわけだ。

 繰り返しのようだけど、電気やプライマルの13年作と同じく、ここ数年(十数年)でやってきた音楽のピントが合った感じ、というのはこの作品にも感じた。Driving Rainあたりからの感触がやっとポールらしい音空間に馴染んだ、というか。まあ、ポールの場合前作みたいな寄り道が多いからブレやすいんだろうなぁ。

 楽曲としてはもうQueenie Eyeがポールの全作品のなかでも上位に来るくらい最高。先述のSave UsやEverybody Out Thereみたいな威勢のいい曲はビートルズというよりウイングスも感じる。AlligatorなんかはそれこそDriving Rain以降の路線が実を結んだ感じ。ブルージーなGet Me Out of Hereは何故かRamあたりの感触も。そして、まあ確かにビートルズ的ではあるけど全然「回帰」なんか感じないNewはまさしく「New」な、温故知新のポール・マッカートニー音楽そのものなのだった。

2014年1月14日火曜日

Primal Scream / More Light


 電気もそうだったけど、プライマル・スクリームも最近イマイチ面白くないなあ、という印象の作品が続いていた。マニの加入以後、ドラマーがダリン・ムーニーに固定され、バンドとして安定するにつれ、アルバムごとに全然違うけどどうしようもなくプライマル、という雰囲気は消えていき、せいぜいVanishing PointとGive Out But Don't Give Upの間でうろうろする、というイメージで、サウンドとしても安定してしまった。悪い意味で。

 確かにわざわざソニックマニアも見に行ったし、感動したし興奮したけど、Screamaderica再現ライヴなんてどう考えてもバンドが過去の存在になったという証拠だ。こっちもそれを歓迎してしまうという現象はつまり、もう俺はプライマル・スクリームに何も期待していなかったんだな。

 ただ、バンドの安定はこの時期徐々に失われていた。Riot City Bluesを最後にオリジナルメンバーのロバート"スロブ"ヤングが脱退という大事件。正直これは俺もショックだった。後任にはリトル・バーリーのバーリー・カドガンが加入。その後、ストーン・ロージズの再結成に伴いScreamadericaツアーを最後にマニが脱退。マイブラのデビー・グッギがサポートで入ったり、正式(ツアー?)メンバーとしてシモーヌ・バトラーが加入したり、という、久々にメンバー構成に動きがあった。そんな時期にMore Lightが出て、そこに久々の満足感があったのは偶然なんだろうか。

 アルバムの録音にバトラーは不参加(加入前?)、カドガンも全面的な参加ではなく、この二人はツアーメンバーという位置づけか。ベースはアンドリュー・イネスや元ジェリーフィッシュのジェイソン・フォークナーが弾いていて、久しぶりにXTRMNTR以降の、固定バンドで作られた感が薄い作品になった。

 背景を長々書いたのは、やっぱり俺が好きなプライマルは体制が安定してない時期なんだ、ということを確認したかったから。ボビー、イネス、スロブ、(+マーティン・ダフィー)を中心にいろんなメンバーが入れ替わり立ち替わり参加する、ある程度流動的なユニットとしてのプライマルが好きなんだな。「バンドマジック」を信じる俺にしてはすごく珍しいパターンかもしれない。XTRMNTRの頃、ドラマーが固定されて本当に喜んだんだけど、そこからつまらなくなり始めたんだから皮肉な物だ。

 残念ながら、More Lightを「久しぶりの大傑作!」と絶賛するほどのアルバムとは思わない。でも、なんかこのアルバムからはプライマルが(再び)先に進んでいく可能性を感じちゃうんだな。それが具体的に何なのかがはっきり言えないのはもどかしいけど、アルバムを聴いていてなんとなくワクワクしたのは久しぶりだったんだ。

 XTRMNTRまではそれがあった。Evil Heatで少し薄まって、Riot City BluesとBeautiful Futureには全然なかった。More Lightの音楽性は、初期のように「またガラっと変わった!」という感じはなく、Beautiful Futureの延長線上にあるのだけど、これまた電気と同じく、なんとなくピントが合ったようか感じがする。合った、とまでは言えないかな。合いかけてる。もう少しだ。

 まあ、このメンバーで安定しちゃって次のアルバムがつまんない、という不安も充分過ぎるほどにあるのだけど。

2014年1月10日金曜日

電気グルーヴ / 人間と動物

活動再開後(J-Pop以降)の電気にはどうしても違和感を感じていて、なにかやりたい感じはすごく伝わってくるんだけどどうしてもピントが合っていない感じがしていた。J-Pop、Yellow、20と三作立て続けに、速いペースでリリースされたがどれにも同じような感じを覚えていた。

 20から人間と動物までは、実は「活動休止」を名乗っていた期間と同じくらいの時間が流れている。だが、今回は特に宣言をせずなんとなくリリースしないような状態だったようだ。Upside Downは先行シングルと呼ぶにはかなり離れた時期にリリースされていたし、Shameも少し時期がずれている。小出しのシングルリリースがあったからあまり「休止」感が無かったのかもしれない。

 Upside Downの時はそれほどピンと来なかった記憶がある。また前作までと同じ路線だな、と思っただけだった。Shameも、格好いい曲だけどインストヴァージョンの方がいいな、と感じていた。

 アルバムの「本当の」先行シングルとしてリリースされたのがMissing Beatzだった。この曲を聴いたときの引っ掛かり感は今までの2枚とは明らかに違った。正直、いきなりガツンと来たわけではないけど、地味に耳に、心に染み着いてくる感じ。いいとか悪いとかじゃなくて馴染んでいた。馴染んでいるのにも気づかないくらい自然に馴染んでいた。そして、馴染んだタイミングでアルバムが出た。

 アルバムの印象も同じだ。一瞬にしてガツンとくる感覚はない。だがなんとなく繰り返し聴きたくなるグルーヴとサウンド。じわじわと染み着いてくるのは同じで、気がつくと口ずさんでいる曲が増えていく。Big Shirtsから徐々に。中毒性が高いのはProf. RadioやSlow Motion。今回は卓球の書くメロディが明らかに冴えている。ほとんど歌謡曲に近いレベルのポップで、だけどなんとなくダークなメロディ。ポップとダークが同居するとノスタルジアを刺激する。俺はそういうメロディに弱い。ニューウェーヴっぽいし、ディスコっぽいし、歌謡曲っぽいし、電気グルーヴっぽい。

 Upside DownやShameもミックスを改められ、アルバムに馴染むようになってシングル以上に居心地のいい音になっている(印象としては正直、新曲より弱い)。あと、個人的にはSteppin' Stoneは蛇足。Vitaminの時のN.O.より要らないと思ったな。なんかのシングルのカップリングにすれば良かったのに。因みにこの曲、勿論モンキーズのカヴァーだけど、実際にはは電スチャの機材屋ロックンロールとほぼ同じ曲と言っていい。

 で、今作を聴いてから過去の3枚を聴きなおすと、そりゃあピントがずれた感はあるものの、何がやりたかったのかがかなりはっきり見えてくる。それを踏まえて今回のツアーのライヴDVDを観ると前作までの曲が非常によく馴染んでいて、今の電気がどこを見て進んでいるのか、その一貫性が解ってくるから面白いね。

2014年1月2日木曜日

Paul McCartney / Out There Japan Tour 2013

ポールは1990年に観ている。あの時のツアーバンド、ランピー・トラウザーズは大好きだし、あのツアーも大好きだからポールに関してはもう満足だと思っていた。だから今回のツアーは基本的には行かないつもりでいた(93年も、02年も同じ理由で行かなかった)。

 でもやっぱり20年以上見ていないということもあるし、今のバンドもDVD等で観てかなりこなれてきた感じはしていたし、やっぱり「見おさめの可能性」を感じてしまっているからかなり迷っては、いた。冗談めかして「仕事が暇になりそうだから旅行がてらに大阪公演行こうかな」とも言っていたのだが。

 まさか本当にそうなるとは。

 ツイッターで交流のある方が「大阪公演二日目が1枚余っている」と言ってくれた。俺はこういうのは縁だと思っているし、10月にももクロ岡山公演に行った勢いもあり「ももクロで遠征してポール行かないのはおかしいだろ!」とばかりにチケット譲渡をお願いした、という次第。かくして、俺は23年ぶりにポール・マッカートニーと出会うことになる。

なんばで合流して云々、は飛ばして話は京セラドームへ直行する。同行の方は勿論非常にライヴ慣れしている人。そんな人が何故か開場時間に間に合うように行きたがるのを不思議に感じていたのだけど、その謎はすぐに解けた。開場から開演までの間、ステージにはDJが登場してポールやビートルズの曲、カヴァー曲を交えたミックスを流していて、コレがなかなか良いのだ。スクリーンに流れる映像も込みで、これ自体それなりのショウとして成立している。俺も軽く踊りながらハイボール呑んで。「大人の」ライヴはももクロと違って呑めるのがいいね。

 開演後のことを細かく書いても仕方がないかな。とにかく圧倒的に凄かった。何を見てるんだろう俺は、という感触があったな。71歳のお爺ちゃんの、50年前の曲を中心にしたノスタルジックなショウ、という印象が一切無かったことだけは間違いない。明らかにこれは71歳の現役ロックンローラーの、最新のツアーだった。

 結局、76年のツアーを「ロックショウ」という映画にした時の感覚からこの人は全く変わっていないのだ。Out Thereツアーは明らかに2013年のロックショウだった。「衰えてない」なんて言えない。でも老いも何もかも全て呑みこんだ現在のポール・マッカートニーのロックショウ。71歳のポールを生で観る、というのはこういうことだったんだなぁ、と思ったのが一つ。

 もう一つは、この人は圧倒的に俺の原点なのだ、ということ。この人がいなければ現在の俺は存在しなかった。そう思えるアーティストはいくつかいるけど、ポールという人は別格だ。「ビートルズは」という意味でもあるのだけど、ある意味、ジョージやレノン、リンゴ以上にそういう存在かもしれない。

 2013年という年は俺にとって、プライベートでもとても重要な年になってしまったのだけど、そういう年の最後に音楽的に原点に帰れたのもすごく重要だったのだなあ、という感慨はすごく大きかった。

 最後にライヴの細かい雑感を。

・Listen to What the Man Saidは今回ピアノ抜きのアレンジ。思ったより違和感無かったのが不思議。ポールはベース、ウィックスはキーボードでサックスのパートをプレイしていたのだけど、音程は鍵盤で、ニュアンスを鍵盤ハーモニカみたいなチューブ式のウインドコントローラーでつけていたのが面白かった。

・Paperback Writerの最新アレンジが格好いい!ギターソロとフェイクしたヴォーカルが加わって、テンペストのヴァージョンみたいになっていた。オリー・ハルソールがビートルズやる時は必ず最高だよね。

・My Valentineはアルバムよりはるかに良かった。やっぱりポールの曲はロックで、ロックバンドでやった時が一番映える。

・新曲は全部よかったけど、やっぱりQueenee's Eyeは最高。Everybody Out Thereも盛り上がったな。ツアータイトルはこの曲から?

・Sgt. Pepperからの選曲が多かったのはなにかあるのかな?Mr. KiteとかLovery Ritaが思ったよりライヴ映えしたのは意外。

・ウイングスの曲もそこそこ多くて、しかもビートルズの曲もロックショウでやってた曲と共通するのが多かったせいであまり「ビートルズ曲を大量に演奏」というイメージは無かった。ツイッターでも書いたけど、バンドの「再現と外しのバランス」が素晴らしかったせいもあると思う。ビートルズのコピーバンドをやる気は一切ないわけ。それは前半で書いた「現役感覚」にも繋がってくるんだけど。このバンドが今のポールの音なワケ。だって、ポールが過去に組んでた中でも一番長期間やってるメンバーだよ。信頼感もすごいんだと思う。

・ロックショウと言えば、ライヴの感想からは外れるけどツアーグッズにウイングスのロゴTシャツがあったのには感激。勿論迷わず購入。

・細かいことを色々言っても、Live and Let Dieの大爆発で全部どうでもよくなってしまう。