2014年6月27日金曜日

Primal Scream / Give Out But Don't Give Up

 Give Out But Don't Give Upを久々に聴いて、なんでボビー達がこのアルバムを駄作呼ばわりしたのかが解ってきた。

 多分プライマルで一番売れたアルバム。キャッチーなJailbirdとRocks(日本の流行歌手たちがこぞってパクリましたね)が入っているのは大きかった。俺も嫌いなアルバムと思ったことは無いのだけど、ただ、徐々に聴かない、聴く気が起きないアルバムになっていったんだよね。それにはバンド自身の評も影響していたとは思うのだけど、多分「聴いてない順位」ではBeautiful Future, Riot City Bluesに次ぐ3位の座は揺るがないだろう。上位2作に関しては「明らかに好きじゃない」作品なので、嫌いじゃないのに聴かないという意味では堂々一位だ。

 早速の閑話休題。

 で、どう思ったかと言うとまず、まとまりがない。アルバムのカラーがない。「メンフィス録音で南部カラーを前面に押し出したファンキーなロックンロールアルバム」というのがカラーの筈なんだけど、いや、確かにそのカラーはあるんだけど、色むらが凄い。

 アルバムの軸はある。大まかにはよく言われたように「ストーンズワナビーな感じの米国風英国R&R」これは勿論Rocksを筆頭に、Big Jet Plane、Call On Me、I'll Be There For Youあたりが該当する。これを中心に緩やかなグラデーションで各楽曲を繋げればいいんだけど、何故かそれがうまく機能しない。その理由の一端は多分、ゲスト勢が主張し過ぎていることにあると思う。

 具体的には勿論ジョージ・クリントンとデニス・ジョンソン。彼らが前面に出てボビーが引っ込む曲だと一瞬何を聴いてるのか解らなくなってしまう。前作のDon't Fight It, Feel Itではそんなことは思わなかったのに、どうしてこうなるのか。楽曲をゲストの色に引き寄せすぎたか、ゲスト(特にデニス)が調子に乗って主張しすぎたか(ライヴではそういった証言もあるようだ)。

 彼らだけではなく、もう一人アルバムから浮き上がっている意外な人物がいる。ブレンダン・リンチだ。Funky Jamをいつものリンチ流ダブにリミックスしてStruttin'という死ぬほど格好いいインストに生まれ変わらせているんだけど、コレがもう、アルバムで浮きまくっている。前後の流れを完全に分断するほどに。どう考えてもアルバムには合っていない。この瞬間だけ完全な英国風味になってしまうのだ。この曲はシングルのカップリングにすべきだった。ってか、多分ポール・ウェラーのシングルに入ってても違和感無いんだけど(笑)

 ゲストが強すぎる理由に、多分このアルバム、一番「プライマル・スクリーム」ってバンドの実態が無い状態で作ったものだから、という面があると思う。クレジットには前作までのメンバー、ヘンリー・オルセンやトビー・トマノフの名前もあるけど、大量のゲストミュージシャンの名前に埋もれてセッションマンの一人と言う印象(そして次作以降彼らの名前は登場しなくなる)。元々プロデューサー気質のアンドリュー・イネスも「プライマルのロン・ウッド」ことロバート・スロブ・ヤングも主張の強いギタリストではないから、結局「プライマル色」を前面に出せるメンバーがボビーとマーティン・ダフィ(彼にしたってこのころようやく正式メンバーになったばかりじゃないか?)くらいしかいないのだ。更にボビーがヴォーカルを余所に譲ったら、もうなんだかよくわからないものになってしまう。P-Funkの曲、ブレンダン・リンチの曲、デニス・ジョンソンの曲、って感じになっちゃうわけ。

 曲順も悪いのかな、と思う。序盤にキャッチーなJailbird、Rocks、I'm Gonna Cry Myself Blind、Funky Jam(全てシングルリリース曲)を並べてしまうのはあまりにも粗雑(*)。そこからレイドバックした地味なロックンロールが続いて、その流れをStruttin'が断ち切って、また戻ったかな、と思うと「ぐにゃ」っとGive Out But Don't Give Upが始まって、もうこの辺で俺は何を聴いてるのか解らなくなってしまう。そんな状態で最後に地味〜なバラード(どっちも物凄くいい曲なんだけど)を2連発されると「あれ?終わったの?」って感じになってしまうのだ。
 
 はっきり言ってね、このアルバム、良い曲しか入ってないんですよ。だけどアルバムとして通すと全然印象が良くないのはこういう理由なんじゃないかと。ちなみに個人的に一番好きなのはJailbird。の、アルバムには入っていないDust Brothers(Chemical Brothers) Remixっていうのが多少気まずい。 

*余談だが、同じように粗雑な曲順でアルバムを、しかも2連発しても印象が悪くならなかった稀有な例がOcean Colour Sceneである。

2014年6月20日金曜日

The Damned

 変なところが生真面目だったりする面があるし、カタログ好きだし、基本を押さえたい欲求とか強いし、ディスクガイド的な本とかも好きだし、ってことで、若いころ「今日はパンクを学ぼう」と思って買い物をした日があった。そこで買ったのが、ダムドと、クラッシュと、ピストルズのそれぞれ1st。解り易過ぎて涙が出るような買い物だけど、当時の俺は大マジだ。まあ、「コレで今日から俺もパンクスだぜ!」みたいな感覚は(残念ながら)無かったけど。

 で、このなかで圧倒的に気に入ったのがダムドだったんだよね。クラッシュはなんか、歌詞を読んだわけでもないんだけど熱さと知的さが性に合わない感じがあったし、ピストルズは「俺のイメージするパンク」に合致し過ぎていた。どっちも嫌いじゃないんだけど、本気でハマる感じではなかった。

 ダムドは適度に馬鹿っぽくて、なんかロックンロールパーティな空気があったし、そのくせLAメタルみたいなひたすら馬鹿ではなくてひねくれてて、知性を感じた。要するに知性の匙加減っていうか、クラッシュは馬鹿が不足してたんだろうね。メタルは馬鹿が多すぎたし。ダムドはいい塩梅だった。

 ディスクガイドや当時の風評(?)は「ダムドは1stとMachine Gun Etiquetteだけで充分」という空気だったし、俺自身この2枚(あと、再結成ライヴのFinal Damnation)だけ聴いて満足してた。丁度その頃ダムドが来日して(ブライアン・ジェイムズを含む編成で来るという予定だったけど、結局ジェイムズは来ずに、キャプテンがギターだった)そのときのライヴもこの2枚からの選曲が大半だったしね。

 まあ、こういう「○○だけで充分」ってのは得てして大嘘なもので、ジャパンで散々悔しい思いした話は何度か書いてるけど、ダムドにも勿論、それは当てはまった。

 特にニック・メイスンがプロデュースした2ndなんて「プログレがパンクをプロデュースなんて面白いわけがない」って評判で、俺も当然全然無視してたんだけど、今聴くと2ndも、Black Albumも、Strawberriesも素晴らしいんだよね。それ以降(キャプテンが抜けてから、か)は聴いてないくて気まずいんだけど。森脇美樹夫が全部悪い。

 そりゃあ、1,3枚目は圧倒的に凄いんだけどさ。個人的にはStrawberriesが好き。スピーディな1曲目、Igniteが特に大好き。あと2曲目のGeneralsは7インチ持ってるんだけど、ロトチェンコの作品をジャケに使っててそれがツボだったな。ダムドとロシア構成主義が繋がった!とか、嬉しいじゃん。音楽の話しろよ!って話だけどね。いや、Smash it Up系のポップなメロディも大好きなんだけどね。

2014年6月15日日曜日

Status Quo / Piledriver


 人間そう簡単に変わるものではないし、ましてや複数の人間の集団が同時に変化するなんてありえない。バンドの方針は「ポップバンドを抜け出してハードにロックするんだ」というものでも、その意識のシフトには各自違うペースとフェイズがあるのだろうし。バンドは人間だし、生き物だからじわじわと変わっていく。そういう意味で過渡期じゃないアルバムなんてのもまず無いのかもしれないな、とこのアルバムについて想う。

 Pye時代最後の2枚を過渡期と位置付けたけど、そういう目線で捉えなおすとPiledriverで方向性が定まったか、と言うとやはり「それもまた、違う」と言わざるを得ないのだ。ぱっと聴き、後年の定番曲やヒット曲が良い位置で収まってるからがっつりハマったアルバムに見えるけど、それ以外の曲がまた新しい振り幅を模索しているようにも見えるところがこのアルバムのミソではないか、という気がする。

 Don't Waste My Time、Big Fat Mama、Paper Plane、Roadhouse Bluesの4曲に関しては何も言うことは無いだろう。ライヴでも定番となるこの4曲がアルバムの半分を占めているから、流れで聴いても非常に安定感はある。O Babyもマイナーな存在ながらこの流れに位置付けて差し支えない。だから、焦点はかなり定まってきている、というのは事実。

 このなかではShy Flyで指し示された「アップテンポの8ビートナンバー」という路線がPaper Plane、Big Fat Mamaの2曲で、しかも前者ではよりポップな、後者ではよりハードな、という両方向への進化形として表れてきているのが特筆したい部分。また、Don't Waste My Timeでのアイリッシュジグ風のリフ導入は後年にも繰り返され、「国民的バンド」への道筋を示したものとして重要。

 問題はこのアルバムの「ブレ」の部分だ。残り3曲がスローナンバーというのはあまりQuoのアルバムでも類を見ない。バラード的な曲がアルバムのアクセントとして1曲くらい入ることは勿論あるのだけど、3曲も入るのは珍しい。しかも作者を見るとコグラン以外のメンバー3人+重要共作者であるボブ・ヤングとバーニー・フロストが全員関わっている。一丸となってこれをやっていたのか、と思うと面白い。

2014年6月5日木曜日

Detective

マイケル・デ・バレスがロバート・パーマーの代わりにパワーステーションに入った意味を、ディテクティヴを聴きながら考えている。

 俺はシルヴァーヘッドより遥かにこっちの方が好きだ。シルヴァーヘッドはつまんねえ三流グラムバンドとしか思ってなくて、ヒット曲以外すぐ飽きちゃう。ディテクティヴはハードロック的でもありながら、ファンキーだったり、ワリとスウィートだったり、ってコトはソウルフルだったりして、比較にならないくらい音楽的に幅広くて、しかもそれがいい感じにまとまっている。

 ソウルとハードロックが歌える人、と捉えた場合のデ・バレスは少し不器用だけど、パワーステーションだとそのおかげでむしろアンディ・テイラーの存在とのバランスが取れた気もする。パーマーだと、アンディが少し浮くんじゃないかと。スタジオではいいんだけどね。ナイル・ロジャースに弾かせろよとか、身も蓋もないコト言っちゃう気がするのね。だから、ライヴバンドとしてのパワーステーションには上手くハマったのかなあ、と思う。

 デイヴィッド・カヴァーデイルって人選はアリだったのかなあ、とも考えるけど。

 余談だけど、「ディテクティヴから後任を選ぶ」という話繋がりで無理に言うと、ボンゾが死んだ時、もし後任ドラマーを選ぶならここのドラムかな、と思う。

 この人は、まあ録音の良さもあるとは思うけど結構ボンゾに近いグルーヴとパワーが出せる人だ。ちょっとスケールが小さいのはやむを得ない。ジェイソンより遥かにファンキーに叩けるし、結構良かったと思うんだけど、ディテクティヴ解散後に引退しちゃうんだよね。ロック会最大の「勿体無い」の一つだと思っている。名前さえ覚えてないのは気まずいんだけどさ(笑)