2014年1月16日木曜日

Paul McCartney / New

ポールはライヴレポート書いたからいいかな、とも思ったんだけど、やっぱり13年ベストアルバムとして触れないわけにはいかないなあ、と思ったので、書く。

 とにかく、俺にはKisses On The Bottomは退屈の極みだった。「買わなければよかった」と思ったポールのアルバムはこれが唯一。基本クラシック作品は手を出してないのだけど、それと同じ扱いすべきだったのだね。なまじポールが歌ってるもんだから騙されてしまった。

 ポールはもう年老いたし、こういう路線にシフトしていくのかなぁ、と漠然と思っていたところに新作リリースの報せ。「ビートルズ回帰のサウンド!」と大々的にアピールされては、悪い予感しかしない。YouTubeなどでタイトルトラックNewが先行公開されたけど、アルバムが期待できなくなるのが嫌だったのであえて聴かずにいた。この段階では、がっかりするに違いないくらいに思っていたのね。

 アルバムリリース後もすぐには買わなかった。数回レコード屋で見かけてもスルーする日が続く。結局迷いに迷った挙句、パシフィック・リム4DXを観た帰りに、時間が空いてしまったついでに思い切って名古屋のタワーで購入。

 アルバムがSave Usから始まった時点で、これを「ビートルズ回帰」と表現した馬鹿を呪う。こんなサウンドなら不安を持つ理由も無かった。リリースと同時に迷わず買った。ビートルズなんて全然感じない。これはポール・マッカートニーだ。勿論ポールはビートルズ時代からこういう人だったけど、ビートルズ的、って表現が間違ってるのは誰が聴いてもわかるはずだ。商売の為の糞表現にまんまと騙された自分が憎い。

 解ってたはずなんだよ。今のツアーバンドと一緒にアルバムを作れば、ポールとしか言いようがないほどポップで、ポールとしか言いようがないほどロックなアルバムが出来るに決まってるんだ。その思いはライヴを観て強くなったのだけど、それだけ今のバンドはこなれてるし、ポールに信頼されてる。違うな、信頼されてるんじゃない。信頼し合っているんだ。

 全曲がバンドで録ったわけじゃないけど、サウンドに統一感はある。プロデューサーも数人を使い分けてるけどアルバムの色ははっきりしていて、それが結局ツアーでも見事に表現されていたわけだ。

 繰り返しのようだけど、電気やプライマルの13年作と同じく、ここ数年(十数年)でやってきた音楽のピントが合った感じ、というのはこの作品にも感じた。Driving Rainあたりからの感触がやっとポールらしい音空間に馴染んだ、というか。まあ、ポールの場合前作みたいな寄り道が多いからブレやすいんだろうなぁ。

 楽曲としてはもうQueenie Eyeがポールの全作品のなかでも上位に来るくらい最高。先述のSave UsやEverybody Out Thereみたいな威勢のいい曲はビートルズというよりウイングスも感じる。AlligatorなんかはそれこそDriving Rain以降の路線が実を結んだ感じ。ブルージーなGet Me Out of Hereは何故かRamあたりの感触も。そして、まあ確かにビートルズ的ではあるけど全然「回帰」なんか感じないNewはまさしく「New」な、温故知新のポール・マッカートニー音楽そのものなのだった。

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